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卒業を知らぬまま

卒業を知らぬまま

俺のうまれたわけなんか いいんだ

声を 出して 届くものなら

きみを つかまえて はなさなかったろう

縁遠さは 感じていた

いつも 同じバスだったけれど

同じ電車だったけれど

声を 出して 届くものなら

思いのたけを 打ち明けていたろう

一度でもいい 誘えたらよかった

思えば 俺なんか

何で 生まれてきたんだか

不思議でならないよ

思えば きみと

同じ空気を 吸っていた あの頃が

今となっては 信じられない

俺は 卒業を知らぬまま

人生を 終える

後悔がない と言えば嘘になる

よく 自分に嘘をつくなと

先達が言うじゃないか

正直になってみようか

告白するよ

きみの声をいつまでも 聴いていたかった

きみのことをずっと 見つめていたかった

見つめ合ってしまったら 俺の時計は止まり

胸の鼓動も停止してしまうにちがいない

けれど 生涯きみと同じ時間を過ごせたら

俺の毎日は どう劇的に変わっていっただろう

時は過ぎてしまったし

少年は大人になり 少女は女になり 母になってゆく

ひかりを感じた日々は もう返らない

俺のうまれたわけなんか いいんだ

声を 出して 届くものなら

きみを つかまえて はなさなかったろう

20170318

糸川草一郎

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