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日本列島の3層構造

日本列島の3層構造・宗教学者・山折哲夫・中国新聞・2017・3・11

ー前半文略ー

日本列島は3層構造で出来上がっていると気づく。この列島の構造は、おそらく日本人の意識にも3層構造を作り出しているのではないか。

深層に流れる「縄文」的感性、中層に浸透する「弥生」的人間観、そして表層をカバーする「近代」的な価値観、である。見落としてならないのは、この3層が互いに他を排除しない、そして否定しない重曹の構造になっているということだ。

相互包摂の関係といってもいい。戦争や災害のような危機に直面したとき、われわれの先人たちはこの3層に横たわるそれぞれの価値観や世界観を柔軟に取り出して対処し、苦難を乗り越えてきたのではないか。

たとえば縄文的感性にひそむ無常観や自然観、弥生的心性に宿る勤勉や忍耐心、そして近代的価値観からにじみ出てくる儒教的な合理主義、などである。

どれか一つの価値や主張を生活の第一原理に据えるのではない。状況に応じて3層それぞれの価値観に身をゆだねる。こうした生き方はたしかに指導原理を欠く無責任、無原則の態度といえば、いえるかも知れない。選択意思の薄弱であいまいな処世術、と批判されるかもしれない。

第二次大戦のみじめな敗戦の経験をふり返れば、そのような忠告に耳を傾けることも大切なことだ。

けれども、テロや難民などの問題に直面する今日、この日本列島において熟成された3層構造の世界観や人間観がこれからは意外な働きをするのではないか。

日本人は過去千年のあいだ中国からじつに多くのことを学んできた。知識や技術だけでなく、自然観や人生観なども、仏教儒教道教を通して吸収してきた。それはまさに千年にわたる「日中同盟」だったといっていい。

ところが明治以降はもっぱら欧米から数えきれない知の体系と物質文明の果実を受容し、栄養にしてきた。戦火を交えたことがあったにしても、基本は「日欧同盟」「日米同盟」の時代だったといっても過言ではないだろう。

長期にわたる「同盟」関係の中で、われわれは自己の道を見失うことなく、意識の3層構造にもとづく選択意識つらぬいてきたのである。

これからの「日米同盟」の基本もその軌道の上にのせること、それ以外にないことを覚悟すべきではないだろうか。

この列島は古くはネアンデルタール人のDNAを持つクロマニヨン人系が第四氷河期末期にマンモスを追ってやってきて、その後、大陸から孤立し、石器時代を生き延び、豊かな縄文時代を築き、弥生時代を経て有史時代に入る。

現代日本人の半分は、クロマニヨン人に滅ぼされ淘汰されてきたとはいえ、平穏な性質で頭も良かったネアンデルタール人の特有の遺伝子を持っている。

この特有な遺伝子を国民の半分の人々が持っている国は他には存在しない。他国で見つかってもそのパーセンテージは無いに等しいほどの割合である。

こうして考えると、3層構造以上に奥深い遺伝子が私達日本人にはあるのだろう。

いつの時代も政権が替わると前政権の功績は無きものとして書き換えられる。しかし、日本の歴史は見事にこの3層構造が生きている。

西洋から入ってきた二元論、二者択一の選択からは人間世界の新たな平和な世界の展望は開けない。

常に戦う相手を設定しないと自己の意思を達成することが出来ない価値は人間世界に不幸をもたらす。

科学は部分観、帰納法

日本人の遺伝子はその科学をも包摂する全体観、演繹法が根底に脈打っていることを信じたい。

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